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「想像力ない原発論議」赤川次郎氏 [赤川次郎]

朝日新聞2011年5月20日夕刊、作家赤川次郎氏の連載記事、三毛猫ホームズと芸術三昧!「想像力ない原発論議」より

(以上略)

原発推進の立場の某作家は、毎年正月に何人かの年寄りが餅を喉に詰まらせて死ぬが、だからといって餅を食べることを禁止しない、と言った。 北野武も「交通事故の年間の死者の数を考えて、自動車に乗るのを止めましょうとは言わない」と語っている。けれども、もし年寄りが一人、餅を喉に詰まらせて死んだら、その家から半径20㌔の住民は避難しなければならず、何十年も故郷に戻れないとしたら、そんなもの誰が食べるだろうか。 車が一台事故を起こす度に、その車を巨大なコンクリートの石棺で覆わなければならなかったら、日本中の道路はどこも走れなくなるだろう。そんな乗り物が普及するはずもない。 原子力発電所が特別なのは、事故が起きたときの被害の桁違いの大きさにこそある。 たった一カ所の原発の事故で、「技術立国」であったはずの日本は(しかも唯一の被爆国なのに!)どれほど世界の信用を失ったか。 「餅」だの「車」だの、「普通の事故」になぞらえること自体、原発の最大の問題点を無視した無意味な議論である。「世界的映画監督」の想像力はこの程度のものなのか。(以下略)

赤川次郎氏のこの意見に全くの同意です。 原発推進の立場の人がよく主張する論理です。 「交通事故死者は年間一万人近くに上る。それでも自動車禁止にはならないし、皆平気で自動車に乗っている。」 「原発事故では一人も死者は出ていないが、炭鉱事故では何百人と亡くなっている。どちらが危険か。」 「煙草による発がん性の危険に比べたら、放射能の方が安全だ。」などなど。 赤川氏が言うように「普通の事故」になぞらえる、原発の最大の問題点を無視したこのような「無意味な議論」はもうやめたい。 一回の交通事故で亡くなるのは多くても数十人、飛行機事故では数百人、炭鉱事故でも数百人。 大惨事には違いないし、犠牲者には気の毒とは思うが、事故はそれきりで終わり、空間的にも時間的にもそれ以上影響は広がらない。 しかし、原発事故は、たとえ放射線の急性傷害での現場の死者が出なくても、晩発性傷害の死者は原発労働者ばかりでなく周辺住民にも遠く広く及ぶ。 周辺住民は居住地を追われ避難しなければならなくなり、何十年何百年も人が住めなくなる。 水も空気も食べ物も放射能汚染したものを長い期間取らなければならなくなる。 さらにチェルノブイリの例に拠れば、放射能で死亡でなくても多くの人の寿命が短くなったり、放射能を浴びたことによる健康不安、精神的ショックなどでのアルコール中毒患者の増加、うつ病による自殺者の増加なども考えられる。 その影響力の深さ広さ長さは、自動車事故などと比べようもない。 煙草について言えば、先ず煙草は赤ちゃん、子供は吸わない。 大人で吸いたくない人は吸わないで危険を避けることが出来る。それでも吸ってガンになる人間は自己責任。 けれども、原発事故による放射能は、不条理にも煙草を吸わない赤ちゃん、子供にも、原発賛成の人、反対の人にも否応もなく等しく降りかかる。 これらを同等に比較して議論なんて出来るだろうか。 もうこういう不毛な議論はやめにして欲しい!!!
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コメント 6

1969kana

さすが赤川次郎さんですね。
どうしてこんな当たり前のことを言う人がやたら少ないのか、理解に苦しみますね。
タケシさんにはがっかりですね。
by 1969kana (2011-06-08 12:09) 

白・嶋・春・富

1969kana さん<特にテレビでは推進派のこういう論理ばかりで、赤川次郎さんのような意見はほとんど聞けませんね。
タケシさんは地震のときは耐震設計の原発に避難する方が安全だとも言ってますしね。お兄さんの大さんも確か東電のコマーシャルに出てましたし・・・
by 白・嶋・春・富 (2011-06-08 15:26) 

坊や

このような方々と何百時間話しても意思疎通できませんね・・
交通事故等の被害を原発事故の土俵に乗せる思想自体が幼く浅い。
悲しいです。
by 坊や (2011-06-08 15:44) 

ねじまき鳥

本当の情報がわからないと判断できませんね。
立場が違うと意見も違いますね。

by ねじまき鳥 (2011-06-08 22:35) 

白・嶋・春・富

坊やさん<本当に悲しくなります。
もう卒業したいです。
by 白・嶋・春・富 (2011-06-09 15:22) 

白・嶋・春・富

ねじまき鳥さん<個々が思考停止にならず自分で情報に接して考えて判断することですね。
by 白・嶋・春・富 (2011-06-09 15:24) 

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