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テレビはフクシマをどう伝えたか② [原発]

☆前日に引き続き、放送を語る会の各テレビ局ニュース番組の検証「テレビはフクシマをどう伝えたか」の続き②です。
長い文ですが、赤字・太字だけでも読んでみてください。
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各ニュース番組の報道姿勢


(1)ゲストの選び方

4 月、どの局にも共通して言えることは、原子力行政に批判的な学者や研究者は一人も登場していないことである
すなわち、原子力資料情報室・伴英幸、京都大学原子炉実験所・小出裕章、立命館 大学名誉教授・安斎育郎、神戸大学名誉教授・石橋克彦といった研究者、内橋克人、廣瀬隆、広河隆一ら評論家やジャーナリストである。

これと対象的に、レギュラー出演していたゲストを見ると、NHK の場合
東京大学大学院・関村直人教授…直近まで経済産業省総合資源エネルギー調査会・原子力安全・保安部会・原子炉安全基盤小委員会委員
東京大学大学院・岡村孝司教授…同調査会・原子力安全・保安部会原子炉安全小委員会保守管理検討会主査
大阪大学山口彰教授…同原子力安全・保安部会原子炉安全委員会委員であって(「週刊金曜日」4/29 号による)、原子炉に関する解説を担当していたのは、すべて原子力行政に協力してきた研究者だった。

民放の場合、直接行政に携わった人たちではないが、TBS の専属のような形で登場した寺井隆幸東京大学大学院教授元原子力委員会会長代理の斉藤伸三氏らは、再三出演して東電の方針や立場を容認するような発言をしていた。

「ニュース23 クロス」では、津波や地震のメカニズムに関する専門家を招いてはいたが、事故
に関する根本的な考え方や処理方法については、もっぱら常連のゲストにしか発言させなかったのは、メディアの姿勢が問われるところである。

フジテレビは「スーパーニュース」「ニュースJAPAN 」とも東京工業大学原子炉工学研究所助教澤田哲生氏を起用。
東電擁護の発言が目に付く反面、詳しくわかりやすい解説と評価する視聴者の声もあった。

このほかテレビ朝日「報道ステーション」では、朝日新聞論説委員・三浦俊章、朝日新聞編集委員・五十嵐浩司の両氏が週2 日ずつ登板し、基本的にはスタジオゲストを呼んでいない。
ただし、金曜日のみゲストコメンテーターとして著名人(津波や原発の専門家ではない)をスタジオに招いている。


(2)報道姿勢全般での特徴、問題点

今回調査、分析したニュース番組に共通の特徴として、被災地報道の充実と原発批判の声の排除という二面性があることが指摘できる。

① 被災者の状況について多様で幅広い取材が行われている。
震災被害も原発災害でも、被災者、避難者の声と、直面する状況が丹念に伝えられている。
とくに原発災害で避難を余儀なくされた人びとの怒り、悲しみの声が、かなり切実な内容を伴って取り上げられており、現地で取材するスタッフの奮闘が想像できる。

しかし、これらの声が原発そのものの批判として、又原発に対する「要求」というレベルでは位置づけられておらず、「悲劇の描写」にとどまっているきらいがある。

② 一方、原発事故に関しては、原発そのものを問う立場の意見なり世論が、明確に排除されている。
事故後、脱原発という世論、流れが大きくなっているにもかかわらず、そのような立場の識者、市民の声が、放送にはまったく反映されていない


③ 伝え方での幾つかの問題~基本的な特徴との関連で~

a)多角的に事態をみるという視点の欠如~別の見方が示されない

原子炉の状況や放射線量について、ほとんど単独の解説者の解説が行われている。
b)原発・原子力行政を歴史的にみる視点の欠如

過去の原発に関する政治を振り返って批判する視点は見られない。
地震学者の石橋克彦氏の専門家としての警告、日本共産党の数度にわたる国会質疑による警告、また専門機関の調査などが無視され続けた経過の検証はまったく見られない(新聞メディアでは存在)。

c)原発そのものを問う視点の欠如

原発そのものを問う市民や識者の見解、運動がほとんど排除されている。
原発の本質にかかわる使用済核燃料の処理の困難さ、これまでも日本各地の原発で海が汚染されてきた状況、といった調査 報道が不在である。

d)行政に対する被災者の要求を探しあて伝える姿勢が弱い

東電対避難先の被災者、東電対農漁民、菅首相対被災者、の厳しいやりとりは伝えられているが、そこからその声をどう受け止めるか、という一歩先まで追及する取材が欲しい。
これらのシーンを紹介した、というところで止まっている。
放射線量についても、どれだけ危険なのか、累積した場合はどうか。
現に今福島第一原発から放射性物質がどれだけ放出されているか、といった重要な点が追及されず、ニュースとして「客観的ならいい」という姿勢が感じられる。
全体にもう一歩進むべきニュースが多い。


原発とその周辺の取材の自主規制の問題

避難区域の20 キロ圏内にも少数ながら住民が居り、原発では多くの作業員が作業に当たってい
る。
4 月の各局ニュース番組では、原発がどうなっているか、周辺地域の汚染がどの程度のもか、
などの自主取材がほとんど行われていない。

NHK は3 月、内部文書で、「原発周辺での取材は政府の指示に従うこと」としているが、民放各社も同様の規制をしていた可能性がある。
取材者が不用意な被ばくを避ける配慮は必要だが、この重大な事故の現場と周辺の取材が横並びの「自主規制」があるかのように控えられているのは、ジャーナリズムのあり方として問題がないか検証すべきである。

以上の特徴に加えて、番組個々について付け加えるならば


NHK 「ニュース7」

ニュース7 はNHK のメインニュースであり、その日のニュースをまとめる存在でもある。
しかし、作業員の下請の実態など朝は時間をかけてリポートしているにもかかわらず、「ニュース7」には入らないことがしばしばあった。
反原発の研究者もラジオには出演してもテレビでは起用しない
視聴率の高い時間帯のテレビでは問題の核心を覆い隠そうとする、そうした姿勢の表れではないか。

NHK 「ニュースウオッチ9」

前述の②に関して、反原発、脱原発の立場からの発言を排除していることは異常ですらある。
ニュースとして、この時期、事故の収束に関心を集中させざるを得ない事情はあるにせよ、「意見が対立している問題については、出来るだけ多くの角度から論点を明らかにすること」(放送法第3 条の2「番組編成準則」)という規定に違反する状態とさえいえる。
ここに、これまでのNHK 報道局の原子力政策に対する姿勢が示されているのではないか
視聴者としては、NHK のあり方に関わる問題として、厳しい批判の声を挙げるべきであろう。

また、被災者の報道に関して、我慢し、耐える面が強調され、加害者の姿に言及しない報道が見られる
原乳を捨てざるを得ない酪農一家が困難に直面したニュースで、「一家は家族の絆でこの苦難を乗り越えようとしています」とまとめたのは典型例だ。(4 月11 日)

日本テレビ


一つの局の複数の報道番組を比較することで番組ごとの棲み分けをしていることが見て取れる。
その典型が、4 月の場合エネルギー問題だった。
「news every 」では解説主幹が「脱原発で化石燃料が復活することで地球温暖化が加速する」と懸念を表明し、原発推進の態度をそこはかとなく示している。
一方、「真相報道バンキシャ」では代替エネルギーとしての風力発電の可能性に言及、わが国で原発40 基分の可能性があることまで指摘していた。
4 月30 日「ウェークアップ!ぷらす」が取り上げたのは「エネルギーの未来像」だった。
ここでは原発推進、反原発、中間的な立場それぞれ複数の人物が登場し、原発の是非、未来のエネルギー問題まで多岐にわたって、長時間の討論が繰り広げられていた。

この局の場合、「バンキシャ」は特にスクープ性の濃い話題を提供しようとしているようだ。他社に先駆けて、現場の作業員へのインタビューを敢行したり、フリージャーナリストを20 キロ圏内へ送り込んだりしている。

テレビ朝日「報道ステーション」

特徴としては、基本的にスタジオにゲストを招かないことか。
また、ほとんどがVTR で構成され、スタジオとしてのコメントにはそれほど強さを感じなかった。
それが少し物足りなさを感じさせる。
VTR の作り方は意図的なものは感じず、総じてバランスよく伝えていたと思う。
視聴者としては、与えられた情報をどのように受け止め、咀嚼していくかが委ねられているような演出の仕方である。
これは演出方法として一つのあり方である。
ただし、その場合は判断材料として、出来るだけ多くの情報が提供される必要があろう。
時に、専門家からの意見を聞きたいと感じたのもその表れの一つで、そのためには必要に応じてスタジオにゲストを招くべきであろう(これまでも皆無ではなかったが)。

TBS テレビ「ニュース23 クロス」

① この番組全体から見れば、4 月中毎回30 分前後の時間をこの問題に振り向け、局挙げての体制を組んだことは評価できる。
② 松原、膳場両キャスターとも、度々現地を訪れて熱のこもったレポートをするなど、大震災・原発事故災害の報道に積極的に取り組む姿勢がうかがわれた。
③ 特に避難区域、計画的避難区域などでは、避難を強いられる人々の不安や経済的困窮の実態などを弱者の視点から問題点を指摘し、行政や東京電力の対応の遅れなどを追求する態度も見られた。
④ その反面、第1原発の災害の原因究明や、災害の収束に向けての国や東京電力の責任追及に関しては、記者会見でのコメントやスタジオのゲストの見解をそのまま伝えることが多く、深く掘り下げて究明する努力が足りず、もどかしい感じがあった。
この時期、どちらかといえば日々の出来事を伝えることに追われていたというべきか。
⑤ その一方で、4 月6 日の「密着アメリカ艦隊‘トモダチ作戦’支える兵士たちの思い」など、形ばかりの米軍の支援活動を3 回も紹介するなど、過剰報道もあったのは問題である。

フジテレビ


「スーパーニュース」「ニュースJAPAN 」とも同じような制作スタンスを持ち、取り上げられる話題も共通したものが多い。
全般に、ナレーション、解説、ゲストコメントでは、事故の個々の局面での対応、情報公開の姿勢などについて、時に政府・東京電力に厳しいコメントも展開するが、脱原発、エネルギー政策の見直しなど根本的な問題には殆ど触れていない
報道をきっかけに起こるパニックを抑制し、原発依存・推進路線を維持しようとの意図が透けて見える。
こうした、事故を小さく見せ、原発依存・推進を報道の基調に据えようとする背景に、メディアと大スポンサー東電との癒着が疑われる
すなわち、フジテレビ・ニッポン放送を傘下におさめ、産経新聞も実質的に支配するメディア企業複合体「フジ・メディア・ホールディングス」の監査役には、南直哉元東京電力社長が2006 年以来座りつづけている。南氏は2002 年原発事故隠しの責任を取って辞任した経歴を持つ(「週刊金曜日」5/27 号による)。

伝え方での幾つかの問題点


① 復旧作業の報道で、投入されたロボット、ポンプ車、放水車、防護服など機器の性能や使用法に異常なまでに詳細な解説が施されていた。
国民の関心とかけ離れたマニアックな報道である。

② 自衛隊、米軍の救援活動も他社に比べ、非常に手厚い報道が行われている。
自社の判断によるものか、当局のPR 作戦への便乗か、いずれにせよ度をわきまえた報道が必要であろう。
それは、天皇の被災地訪問についても言えることだった。

木村太郎コメンテーターのスタンス、取材現場、視聴者の気持ちと乖離している場合が多い。

(例)
・番組の中で、菅首相に対し、民主党のマニフェストを放棄し増税せよと呼びかける
・原発の賠償を巡って電力料金が値上げされるのでは、との問いかけに「東電は当然責任があるが、誰かが払わねばならない」と東電に甘い姿勢。

終わりに

この記録と分析をまとめている最中、原発事故は発生から5 ヶ月を迎えた。「工程表」上の第1ステップは一応当初の目的を達成したと発表されている。
しかし、浄化装置は安定して作動しているわけではなく、事故は一向に収まる気配を見せていない。
原発そのものもさることながら、ホットスポットは全国に広がり、福島県や宮城県の肉牛からは高濃度のセシウムが検出され、出荷が停止されている。
栃木県で生産された腐葉土からも高濃度のセシウムが検出された。
原発が一旦暴走を始めると危険は際限なく広まっていく恐ろしさを我々は目の当たりにしている。
しかも、その危険性が一体何時まで続くのか誰にもわからない。
そうしたなか、国は「原発安全」を宣言し、九州電力の玄海原子力発電所が再開される寸前にまで手続きが進行していた。
この件に関しては、菅首相の突然の「ストレステスト」発言がとび出し、九州電力の「やらせメール」事件が暴露され、再開は中断した形になっている。
しかし、経済産業省や電力会社は再開の意向を変えてはいない。
この間ニュースでの原発及び原発事故の伝え方は変ったのだろうか。
基本的には相変わらず政府発表の原子力政策に寄り添っているのではないか
たとえば、7 月末、YouTube に掲載された児玉龍彦氏の衆議院厚生労働委員会での参考人陳述を伝えたテレビはなかったのではないか。
東京大学アイソトープ総合センターの所長を務める児玉氏は、内科医の立場から子どもの被ばくを大変憂慮している。
しかし、国は有効な措置を何一つ講じていない、と氏は訴えたのだ。
氏の計算によれば、今回の事故で飛散した放射性物質の量はウラン換算で、広島型原爆の20 個分だという。
だが、放射線量を計測する手立てを国がおこたっているばかりか、放射能の危険性が充分認識されていないと訴える。
こうした極めて重要な情報をテレビは報じていない。
児玉氏の発言はほとんど一般には知られることなく時が過ぎていっている。
そして、最も検証が必要な「原発事故の原因と責任」については相変わらず曖昧なまま事は進んでいるのではないか。
ひるがえって、私たちが調査の対象とした4 月、事故の責任を追及する何らかの報道は存在したのだろうか。
結論から言えば、ほとんどゼロであった。
が、その中で僅かではあるが、責任問題に触れ
たゲストの発言もあった。

フジテレビ「ニュースJAPAN 」(4/27)「スーパーニュース」(4/28)
原子力委員会専門委員・青山繁晴氏「安全神話に胡坐をかいていて、このような事態を想像していなかった。だから僕にも重大な責任がある。ただ、原子炉が自動停止しても、冷却できなければ駄目なので、そこを何とかしろと12 年まえから主張し続けてきた」と発言。

NHK 「ニュースウオッチ9」(4/8)
大阪大学教授・山口彰氏「(全電源喪失を想定できなかったという)甘かったところは反省し、今後どうするか考える必要がある。安全指針は、非常用電源が壊れても短時間で回復するという考え方だった。外部電源も複数あるので、どれかが数時間で復旧するという前提で考えていた」と反省の弁。

NHK 「ニュースウオッチ9」(4/11)
こうした中で、「ニュースウオッチ9」に出演した作家・柳田邦男氏の発言は、事故の初期からあった「想定外」という発想、あるいは思想を具体的に批判し、事故の核心に迫った珠玉の言葉として特筆しておく必要があろう。
「(今回の事故は)人智を超えた災害ではなかった。平安時代の記録がある。通産省の審議会で問題提起されている。行政と東電、工学の専門家はそこまで考えたらコストがかかって物が作れない、どこかで割り切って線を引こうと、マグニチュードは8、津波は5 メートルにしようと決めた。科学的に見えて、想定の線を引いた途端に科学が放棄される。それ以上のことは起こらないことにしようという、全く主観的な判断力が働く」。

原発が地震や津波に弱いという指摘は、1990 年代から再三繰り返されてきた。
しかし、国も東京電力も警告を無視し続けてきた。
柳田氏の言う「科学が放棄された基準」がまかり通り、「安全神話」が創りあげられ、その言葉の上に安住してきた。
それは経済界の要請でもあった。
そして、官界、財界、電力会社、それに学会とマスコミまでもが加わって強力な「原子力村」を形成し、原子力発電を推し進めてきた。

今回の原発事故はそうした悪きしがらみを絶って、原発報道において、報道機関がジャーナリズムとして自律できる絶好の機会なのではないか。
そのためにも歴史に学び、今回の事故の原因と責任について、納得のいく検証をする必要があるのではないか。

5月以降NHK をはじめ民放各局で原発事故に関する優れた特集番組が紹介されてきた。
放射能汚染の実態、欠陥に気づきながらも改修に踏み切らなかった東電の怠慢、日本に原子力発電が導入された経緯など、それまで日常のニュースでは伝えられなかった原発事故と原発そのものの実態が次第に明らかにされてきている。

日常のニュースの中でもこうした問題が積極的に取り上げられることを切望する。
原子力発電に関しては、使用済核燃料の処理、廃炉の問題など課題は山積している。
再生可能エネルギーについても積極的に議論をすすめていく必要がある。
報道各社に課せられた責任は重い。
しかし、その職責を全うした先には新しい地平が開けるはずである。
それを示すことこそジャーナリズムが果たすべき役割であろう。



重要項目別各局ニュース番組の概要(2011 年4 月1 日~30 日)

(1)「レベル7」への引き上げについて

NHK ニュース7
12 日:30 分以上使って「 レベル7」 になった経緯などを報道、枝野官房
長官「申し訳ない事態だがチェルノブイリと違い、直接的な健康被害は出さないで来られた」。
だが避難している人たちや風評被害への懸念に応える内容にはなっていない
ただ、水野倫之解説委員は「現状ではチェルノブイリより下であるが、技術大国の日本でレベル7 の事故をおこした事は深刻で、世界は厳しい目で見ている」 と指摘。

ニュースウオッチ9
12 日: 放出された放射性物質がチェルノブイリより一桁少ないと報道。
スタジオ出演の岡本孝司東京大学大学院教授「チェルノブイリは一度の爆発で避難が遅れた。福島は地震で避難、被ばくの被害は桁違いに少ない」 と解説。
ただ「チェルノブイリと違って放出が続いていることは注意が必要」 と指摘。
大越キャスター「 見えない恐怖にさらされている人たちにリスクへの心構えも含めて確かなメッセージを伝えることは大切な政治の役割」であるとし、菅総理が「 レベル7」 について答えなかったことを批判した。


日本テレビ

news every
12 日: スタジオの倉澤解説委員「チェルノブイリは死者30 人、被ばく作業員約24 万人、放射性物質量520 万テラベクレル。一方福島は死者0 人、被ばく作業員21 人、放射性物質量37 万テラベクレル。したがって軽々に比較すべきでない」と発言。
また柏谷解説主管は「原発危機が脱原発につながっていくと化石燃料の復活、強いては地球温暖化へ進む恐れあり」との懸念を表明
だが、代替エネルギーについては言及なし。


シューイチ
17 日: スタジオゲストの手嶋龍一氏「日本は原子力の安全性について国民的な議論がなされていず、コンセンサスもとれていない。政府、東京電力は今回の事故を教訓に国民に安全性について改めて問いかける必要がある」と発言。


テレビ朝日

報道ステーション
12 日: チェルノブイリとの比較は他局と同列。
ただ、レベル4 から5 そして7 へあがったことについてロシア、韓国、中国、アメリカの反応を紹介、諸外国の見方に重点を置いていた。
スタジオ五十嵐浩司朝日新聞編集委員「こういう深刻な事態であることを国民は知っていた。責任ある人が節目節目で何故そういう判断をしたか、見通しはどうなのかを説明して欲しい」とコメント。
しかし、いまひとつパンチが足りない感じ。説明責任を果たさない
政府に対する追及は弱い。


TBS

テレビニュース23 クロス
12 日: 原子力安全・保安院、東京電力の発表に併せて、飯舘村菅野村長、木村福島県知事の原発への懸念を紹介韓国とドイツのメディアの反応についても伝えた。
スタジオ出演の寺井東京大学大学院教授、「レベル7 との判定の遅れは放射能の総量などの計算に手間取ったため」と東京電力の立場に立って解説。キャスター2 人からの疑問「レベル7 の発表の仕方、真相にどこまで迫れるのか」などには明確な回答は得られなかった。
他の研究者、専門家の見解はなし。


フジテレビ

スーパーニュース
12 日: 保安院の発表と対比して、「いまも放出は止まっていない」「 海に放出された汚染水がカウントされていない」 事をコメントで説明。
「 レベル変更の説明不十分。非科学的」 とコメンテーターは批判的な指摘。
13 日:NY タイムス「放射性物質の大量放出を日本政府が認めるまで1 ヶ月かかっている」ロシア国営原子力企業広報担当「評価行き過ぎ」を並列して紹介。
「遅すぎた」が大勢を占める海外の反響との間にズレを感じさせた。

ニュースJAPAN
12 日:V リポは、チェルノブイリ事故の最近の状況と比較しながら「レベル7」の重大性をリアルに伝えた。
一方、澤田哲生東京工業大学原子炉工学研究所助教「チェルノブイリより規模が桁違いに小さい」と、福島の比較的「健全な状態」を強調。併せて、「 レベル7」 への引き上げ理由を「原子炉3 基の炉心損傷、2 号機格納容器の一部破損、高濃度汚染水の大量流出。
一番大きいのは放射性物質が空気中、海水に放出されたこと」と危機的状況も率直に指摘。


(2)「工程表」はどう報道されたか

NHK

ニュース717 日: 海江田経済産業大臣「6~9 ヶ月後に住民が帰宅できるかどうか判断」。
山崎淑行記者「現地では余震もあるので計画通り工程表が進むかどうか不明」。
ニュースウオッチ9
18 日: ゲストは岡本孝司東大大学院教授。
工程では、設備の復旧だけでなく、たまった汚染水を処理して、圧力容器に戻す新たな設備の構築も目指されていると指摘。
また、格納容器を水で満たす「水棺」の内容と効果について解説。
ただ、どこが難しいのか、実現の可能性などについては楽観的な解説との印象あり。



日本テレビ

news every
18 日(月)報道なし


テレビ朝日

報道ステーション
18 日: 京都大学原子炉研究所・中島健教授「格納容器に大量の水を入れることの危険性、高濃度の放射線の中での作業の可否」などを例に、工程表どおりに進めることへの懸念を語る。
コメントも「果たして計画通りに進めることが出来るのか」と疑問を呈す。
一方、五十嵐朝日新聞編集委員は「 工程表が示されたからには、次は住民が何時故郷へ帰れるか、其の道筋を示すことが政治の責任」 と発言。

TBS

テレビニュース23 クロス
18 日: キャスター2 人とも疑問を呈す。
寺井東京大学大学院教授も作業環境の劣悪さから工程実現の難しさを認める。
地元の酪農家、避難住民も疑心暗鬼。
ただ、作業に直接関わる人たちの声はなし。

フジテレビ

スーパーニュース
18 日:V リポ「 工程表に不安の声」 を詳細に報道。東電発表の工程表の「 水素爆発の恐れ」「 電源喪失の可能性」 などと朱筆された部分に注目したもう一つのV リポ「 工程表赤文字の真相」 と併せて、実現性に強い疑問を呈した。
これと対象的に、スタジオの木村コメンテーターは工程達成に楽観的な意見を披瀝、東電擁護の姿勢をにじませる。

(3)原子炉の状態、汚染水について

NHK ニュース7

4 日: 東京電力、低レベル汚染水を海に放出すると発表。
水野解説委員「低レベルとはいえ、海への放出は許されないことだが、緊急事態としてやむをえない措置。空気中の放射性物質と併せて政府、東電はもっとしっかり説明する必要がある」と解説。
ただ、体内外被ばくに対する政府の認識については言及せず

ニュースウオッチ
1 日: 山口彰大阪大学教授「4 号機の下部は健全である可能性が高い。燃料プール冷却系を生かせば、冷却は安定する」
4 日: 岡本孝司東京大学大学院教授「汚染水の海洋投棄は、背に腹はかえられぬやむをえない措置。法律上は問題ないが可能な限りやらない方がいい」
6 日:1 号機に窒素ガス注入を検討。
岡本教授「水素爆発の予防的措置」。
大越キャスター「 窒素注入のリスクは?」 、岡本「 放射性物質の更なる漏洩、冷却能力の低下、炉心の不安定化、水素爆発のリスクあり」
14 日: 汚染水の上昇についてのコメント「注水は続けなければならない。しかし、核燃料は溶け出して原子炉の底にあると考えられる」


原子力学会澤田隆副会長の談話「このまま冷やし続ければ2~3 ヶ月のオーダーで安定するだろう」。
チェルノブイリ事故技術顧問武田充司氏の談話「 チェルノブイリより対策は立てやすい。しかし数が多いという困難はある


日本テレビウェークアップ!ぷらす
30 日: ゲストの飯田哲生環境エネルギー政策研究所長「原子炉の安全審査が形骸化している。電源喪失は想定していなかった」と発言

news every
9 日: 低濃度汚染水の海洋放出、1 号機への窒素注入を報じる。原子炉損傷調査のためアメリカ製無人ヘリを飛ばすことも。
18 日: 原子炉建屋内部の放射線量測定にアメリカ製ロボットを投入し、データ収集を行うと報じる。
この日、作業員の被ばく線量上限を100 ミリシーべルトから250 シーベルトに引き上げる。
26 日:1 号機冷却のため注水量を一時的に通常の2 倍にすると報道。

真相報道バンキシャ
10 日: 福島第1 原発を襲った津波の高さ15 メートル。
トレンチにたまった高濃度汚染水の深さが92 センチに達していることを報じる。


テレビ朝日

報道ステーション
6 日: 高濃度汚染水の流出とまる。
しかし「流出ルートをふさがれた汚染水の行き先は不明」とのナレーション。
7 日:1 号機への窒素注入順調。
「 アメリカは原子炉内部に懸念を抱いている」 とのアメリカ議会のVTR も紹介。
11 日: 震度6 弱の余震で冷却水ポンプ一時停止、其の後注水再開のニュース。
14 日:3 号機圧力容器で温度上昇。地下水放射性物質濃度1 週間で10 倍に。
三浦俊章朝日新聞論説委員「きちっとした検証が必要。今すぐ出来ること、それは事故発生からこれまでの記録をありのままとっておくこと」と発言。
原子炉の状態などはほぼ毎日ナレーションとVTR でわかりやすく説明されていた。

TBS
テレビニュース23 クロス
6 日: ゲストの齋藤伸三元日本原子力学会会長・原子力委員会元委員長代理「圧力容器下部と貫通部から水素と酸素が漏れ、水素爆発を惹き起こす危険性」を指摘。
7 日: 齋藤氏「格納容器は現時点では健全」と発言。
一方、原子力安全・保安院は「 メルトダウンを想起させるデータあり」 との見解を表明。
両者の間に違いがあるのかどうかは解説されず。
8 日: 地震直後からのデータ初公開。
九州大学特任教授工藤和彦氏「12 日には燃料棒最下部まで空焚き状態になるなど、危険な状態にあった」と発言。
20,21 日: 無人ロボットによる建屋内部の映像公開。
しかし、原子炉本体の様子はわからず。

フジテレビ
スーパーニュース
当初は東電発表を忠実、詳細に報道。
しかし、放射性物質の環境や住民の健康について及ぼす影響については、科学的視点からの独自取材は殆どなかった。
メディア自身も視聴者の不安をあおり、パニックに陥ることを恐れて予測報道を控えたきらいがある。
しかし、「レベル7」に引き上げられる前後から、原子炉の損傷状況や危機について隠さずに伝えようとする論調の微妙な変化が感じ取れた。

ニュースJAPAN

(4)a 放射能汚染の状況と放射線量

NHK
ニュース7
5 日: 茨城沖のコウナゴから基準値を超えるセシウム検出。
県内の全漁連コウナゴ漁中止。
6 日: 茨城の全漁連、東電に抗議。
東電、漁業関係者に陳謝。
漁業者「 汚染水の放出は早急にやめよ」 と抗議の声。

ニュースウオッチ9
1 日: スタジオゲスト、長崎大学大学院教授山下俊一氏「100 ミリシーベルトまでなら問題ない。洗えばおちる。メディアは正しい情報を伝えることが大事」と述べる。
2 日: 放射線医学総合研究所内田義也博士「もともと日本人の半分は癌になるので放射能との因果関係はわかりにくい。成人100 ミリシーベルト、子ども30 ミリシーベルトで、癌発症率0.5 % 増(ICRP の計算)」と解説。
7 日: 東京女子大学名誉教授廣瀬弘忠氏「放射能だけでなく、色々な危険の中で我々は生きている。放射能も、危険ではあるがその中で生きることも考えねば。そのためには、国はウソをつかない、隠さないことが大事」と主張。
しかし、疫学的なデータや、低線量被ばく、内部被ばくの危険性について警告する専門家の見解は紹介されず。

日本テレビ
真相報道バンキシャ
10 日: フリージャーナリスト神保哲生氏、20 キロ圏内に潜入リポート。
圏内にはまだ200 人の人が暮らしていること、原発作業員へのインタビューなどを紹介。

テレビ朝日
報道ステーション6 日: 大気中の放射線量を街頭大型ビジョンに表示、「 東京都内は、震
災前よりやや数値が高いが、低下傾向にある」 と解説。
11 日: 福島県飯館村、周辺地域より放射線量高い。
「健康への影響が懸念される」 と報じる。
20 日: 原発20 キロ圏封鎖。
山下俊一長崎大学大学院教授「安全を考えての非常に厳しい基準。年間20 ミリシーベルトを超えたからといって、直ちに健康に被害が出るというものではない」と述べる。

TBS
テレビニュース23 クロス
4 日: 低レベル汚染水の海洋放出について、寺井東京大学大学院教授「海水の汚染は、海流が海のかなたへ行ってしまえば濃度が薄まるから問題ない」と発言。
その反論もないまま番組は進行。
5 日: 韓国、ロシアから抗議のコメント。
これを期に海流と汚染についてのグローバルな視点での取材が欲しかった。
15 日: 同心円的避難区域の設定についての問題点を報道。
被災地の正確な汚染マップが作られていないことを、JCO 事故の調査に当たった田中俊一・元日本原子力学会長の話を軸に構成。
臨場感にあふれる好企画。

フジテレビ
スーパーニュース
5 日: 北茨城沖のコウナゴから高い数値の放射性物質検出のニュースを受けて、首都大学東京・大谷浩樹教授「超えたからといってすぐに健康に害が出るわけではない」と発言。

ニュースJAPAN
4 日: コウナゴに関する見解。
東京海洋大学・石丸隆教授「既に出荷されているものは食べても全く問題ない」 。
スーパーニュースともども健康への害がないことを強調
しかし、それ以外の立場からの発言はなし。

(4)b 農・漁・一般住民と放射線量

NHK
ニュース7
魚介類や野菜の汚染については、その都度解説者が詳しく対策を説明。
しかし、印象として楽観的な報道

ニュースウオッチ9
放射能の住民への被害については連日報道。
農民、漁民、一般住民など多岐にわたって取材されていた。
26 日: 東電に抗議行動に向かう農民たち。
「 毎日怒っている。どうして生きていくんだ」 「東電からははっきりしない言葉ばかり」東電から満足のいく回答は得られなかった、とのナレーション。
27 日: 浪江町の若い漁業者「豊かな海返して欲しい。原発なければ、津波と地震だけだったら復興の明るい顔していられたのに」被災者の声を丹念に取り上げているところは評価できる。
ただ、被害地での美談や士気を鼓舞するドキュメントのわりに、人々の苦し みに焦点を当てた企画が少なかった
また、現場の声を政府や関係機関にぶつけて「これをどうするか」という報道機関としての追求の姿勢も弱かった。

日本テレビ
ウェークアップ!ぷらす
30 日: 東日本大震災の避難者数、避難先を紹介。
日本の原子力発電の歴史紹介。

news every
18 日: 福島県楢葉町の自衛隊最前線基地(J ヴィレッジ) を取材。
自衛隊員、東電の下請作業員たちが寝泊りする施設や、除染の様子を紹介。
22 日: 計画的避難区域に指定された地域の人たちの反応紹介。
住民からは次々と不満の声あがる。
26 日: 福島県二本松市で大規模酪農を営む畜産農家を核に、原発被災地の畜産業のいまを多角的に紹介。
校庭で遊べない子どもたちを郡山市を例にルポ。
教室での体育授業を強いられている実態を紹介。
27 日: 計画的避難区域に指定され、村から離れなければいけない飯舘村の人々の不満の声を中心に番組を構成。

真相報道バンキシャ
24 日: フリージャーナリスト細谷氏20 キロ圏内で放射線量を測定。
地表面で60 マイクロシーベルトに達するところも。
東大病院放射線科中川恵一准教授「7 か月間被ばくすると発ガンリスクが上昇する
量」と指摘。
原発のある自治体の首長(23 人) にアンケート。
現状維持9 首長、減らすべき6 首長。
スタジオでは代替エネルギーとしての風力発電の可能性についても言及。
原発40 基分の可能性もあるとの発言あり。

シューイチ
17 日: 菅首相の「避難地域には当面住めないだろう。10 年、20 年住めないままだとゴーストタウンと化すであろう」との発言に地元反発。
飯舘村菅野村長「 心無いことを言う人だ。少しでも早く戻れることを考えるのが政治家の仕事ではないか」

テレビ朝日
報道ステーション
野菜や魚の安全性、国の発表をスタジオで繰り返し、「 安心して購入しましょう」 と訴えるキャスターたち。
一方、住民の生活については、毎回「 避難所で聞く」 として取材が続けられていた。
その中には、国や東京電力に対し憤りを隠さない人達がいる一方で、原発によって成り立つ村の、複雑な住民感情も紹介していた。
また、手を突いてわびる東電の社長の前で、より深く頭を垂れる人も。
また、19 日、福島県からの転入者に、放射線量検査の証明書の提出を求めた茨城県つくば市の例が紹介された。
スタジオコメント「無知が怖いにつながり、排除するという方向に向かってしまう。正しい理解が必要」 。

TBS
テレビニュース23 クロス
5 日の北茨城沖コウナゴから基準値を超えるセシウムが検出されたことをきっかけに、出荷制限や出漁停止など農、漁業に対する影響についてはその都度報道していた。
一方、放射線量の多い福島県の13 小中学校に対し、文部科学省は屋外活動を制限するよう通達したが、その基準値、年間20 ミリシーベルトを巡って、29 日内閣官房参与の小佐古東大大学院教授がこの数値は高すぎるとして職を辞する問題が出来した。
この時ゲストとしてスタジオ出演した細野首相補佐官は、20 という基準は原子力安全委員会の見解に沿ったものだと釈明したが、追及は中途半端に終わった感じ。
22 日: 長崎大学名誉教授長滝重信氏「 年間被ばく量20 ミリシーベルトは、将来ガンになる確率を0.2 % 増加させる」 と発言。


フジテレビ
スーパーニュース
1 日:20 キロ圏内29 人、30 キロ圏内329 人の残留住民の暮らしぶりVTR リポート。
4 日:「 風評被害続く農産物」 「風評被害に負けるな。100 円野菜に大注目」
15 日: 飯舘村村民集会ルポ「対応遅すぎ」
22 日: 東電社長お詫び訪問で住民「ここに住んでみろ」「6 号機動かすんじゃないぞ」

ニュースJAPAN
7 日:「 千葉県の卸売市場、茨城沖の海産物受け取らず。農水省指導。市場混乱」 と報道。
14 日: 福島県南相馬市ルポ「原子力発電所持ってきた人恨みます」と地元民は憤る。

(5)原発の現場作業員の状況はどこまで伝えられたか

NHK
ニュース7
6 日: 難航する汚染水の回収。水野解説委員「作業員の話では手袋を3 枚重ねて仕事をするのではかどらない。建屋は放射線が強く、簡単には近づけない」
18 日: 水野解説委員「 原子炉建屋内での作業は不可欠。しかし高い放射線に阻まれて作業は難しい。工程表の達成は難しくなる」

ニュースウオッチ9
5 日: 作業現場の放射線管理員インタビュー( 匿名)「100 ミリシーベルト超えるところざらにある。水は測ってみないとわからないから怖い。ボルト一つ締めるのに、30 分、1 時間かかる」
27 日: 東電女子社員内部被ばく。
東電「 把握できていなかったことは申し訳ない」 、保安院「極めて遺憾」 、ナレーション「 医師によれば健康に異常はない」
ただ、作業員がどのような状態にあるかの直接取材は殆どなく、記者会見によるニュースが圧倒的に多い。

日本テレビ
news every
18 日: 福島県楢葉町にある自衛隊の最前線基地「J ヴィレッジ」取材。
自衛隊員、東電社員、下請作業員ら800 人が暮らす。
自衛隊ヘリが放射線量を測定、装甲車の除染作業を紹介。
しかし、生活ぶりは紹介されず。

真相報道バンキシャ
10 日: 福島第1 原発、現在作業員277 人。
作業員へのインタビュー「 放射能は気にしない。早く原発を直したい」 。
ただ、生活ぶりの詳細や、どんな場所で働いているかなどは明らかにされていない。

テレビ朝日
報道ステーション
6 日: 復旧作業に当たる東電協力会社職員、タービン建屋地下1 階の様子を語る。「普段は水のないところが池みたい。
流されてきた車がある。
作業は1 日4 時間くらい。被ばくするのは怖い」 。
19 日: 体育館で休む防護服姿の作業員( 写真)。
眠るときも防護服を着たまま、毛布の上に横になる。
食事は3 度になったが、レトルト食品や缶詰だけ。
スタジオ、朝日新聞編集委員五十嵐浩司氏「現場は肉体的、精神的に限界に来ている。長期化に備えて国がイニシアティヴをとって国家プロジェクトを組む必要がある」と指摘。

TBS
テレビニュース23 クロス
19 日から4 日間、作業員の劣悪で危険な作業環境を取り上げた。
20 日:2 号機の汚染現場の状況についての作業員の証言特集。
出撃基地「J ヴィレッジ」の様子も紹介。
防護服に身を固めた作業員たちが、口々に高い放射能の中で働く苦しさを訴えていた。
21 日: 放射線手帳も持たずに働いている作業員がいる実態を指摘。
会社の健康管理のあり方に警鐘を鳴らした。
東電は積算線量が100 ミリシーベルトを越す作業員が29 人いることを認めたが、その後
も被ばくの数値と被ばく者は増え続けている。
27 日: 東電女性社員、原発敷地内の建物で被ばく。
原子力安全・保安院「 極めて遺憾」 とコメント。

フジテレビ
スーパーニュース
3 日:「4 号機建屋地下で社員2 人の遺体発見」 の報。
しかし、東電の発表だけでその後のフォローなし。
28 日: 原子力委員会・青山繁晴専門委員が22 日に撮影した原発の様子を紹介。
原発の現状、作業員の復旧作業の様子、吉田所長へのインタビューなどで構成。

ニュースJAPAN
19 日: 現場作業員の医療支援に当たった医師・谷川武愛媛大学教授出演。
放射線被ばくの危険と劣悪な労働環境を報告。
医療体制の整備、長期応援体制の必要性などを提言。
21 日: 虎の門病院谷口医師、「1999 年JCO 東海村事故を教訓に、作業
員は予め造血幹細胞を採取しておくこと」を提言。
27 日: 原子力委員会・青山専門委員の報告。
「 案内の職員が被ばくしないよう、自分1 人だけが車を降りて撮影した」 という映像を公開。


(6)原発の是非、これからのエネルギー政策について


NHK
ニュース7
反原発の立場の学者などの出演がないので、視聴者の前での論争が起きず、原発の安全性や経済性などの疑問は解けずに終わってしまう場合が多かった。
客観的な情報としては、18 日: 世論調査の結果発表。原発容認27 % 、否定43 % など。
がある程度。

ニュースウオッチ9
「 ニュース7」 同様、18 日のNHK 世論調査以外、この項目については見るべきものなし。
ただ、11 日には、IAEA 天野事務局長へのインタビューが紹介され、大越キャスターの「これからの原子力政策は」との質問に対し、「化石燃料が増えたわけではない。エネルギー問題は広い観点、長期的な視野で考えていく必要がある」との天野氏の発言を紹介。
「日本は是非がんばって欲しい」というコメントを伝えた。
この他、全国の他の原発の状況の検証、使用済核燃料の処理問題などテーマとすべき課題は数多あるはずだが、どれ一つ取り上げられなかった。

日本テレビ
ウェークアップ!ぷらす
30 日:「 エネルギーをどうすべきか原発は続けますかエネルギーの未来像」 というテーマで9 人のゲストによる討論会実施。
討論は電力会社と国、政党との癒着構造にまで言及され、原発の安全性の確認が求められた。新エネルギーの利用への発言も目立った。

news every
26 日: 柏谷解説主幹「原発との共存が崩れると、生活基盤さえ失われる」と発言。

真相報道バンキシャ
24 日: 原発所在地の23 首長にアンケート実施。現状維持9 人、減らす6 人。
解説、電力会社からの交付金は魅力。
福井県立大学井上武史講師「 原発は財政的な特効薬」 。
この日、番組では代替エネルギーについても開発可能電力量、コストなどについて解説。

テレビ朝日
報道ステーション
総体的に反原発の空気を感じるが、スタジオに専門家が同席していないためか、いま一歩踏み込んだコメントがなかった。
18 日: 五十嵐浩司朝日新聞編集委員「温暖化防止、低コストでエネルギーの切り札と考え、推進してきたことをすべて見直す必要あり」と発言。
21 日: 三浦俊章朝日新聞論説委員「 今の電力業界のあり方、原子力政策のあり方が十分討議されないままに東電を護る枠組みだけが出来ていく」 と述べる。
26 日: 五十嵐編集委員「日本でエネルギー政策をどうするかという全国民的な議論を深める絶好の機会」と主張。
27 日: アメリカ・ノーチラス研究所の震災後の電力問題についての報告書を紹介「原子力や火力に頼るよりも、省エネや太陽光など再生可能エネルギーを拡大する方がコストが安く、環境にもよく、電力不足を早く解消できる」。


T B S
テレ
ビニュース23 クロス
全体として今回の災害を惹き起こすに至った原子力政策の歴史的背景や、金に物を言わせて原発を推進してきた政治のあり方などへの追及は乏しかった。
ただ、7 日、志賀原発訴訟で2006 年差し止め判決を出した金沢地裁の井戸元裁判長にインタビュー。
今回のように多重防護が有効に機能しない可能性について判決が正確に予言していたことを紹介し、原発の強引な推進に警鐘を鳴らしたことは評価される。

フジテレビ
スーパーニュース
23 日: 放射性廃棄物は10 万年後まで立ち入り禁止で管理が必要とする映画「10 万年後の安全」 を紹介、「 最終的に人間の手に負えないことを始めてしまうのは問題」との声で締めくくった。

25 日:FNN 世論調査結果(22 日実施)
しかし、原発の是非、エネルギー政策などの質問項目なし。

28 日:青山原子力委・専門委員「ニュースJAPAN 」と同様のことを披瀝。

4 日:IAEA 天野事務局長談話「世界の原発に多大な影響を与えた」とし「原発の信頼回復のため更なる安全対策を」を提言締めくくりのコメントでは、天野氏が「原発の必要性を強調」したことを印象付けた。

20 日:「英、汚染の海はいま」のタイトルでイギリス・セラフィールドの原子力関連施設の海洋汚染の歴史をルポ福島での汚染水放出への抗議行動も紹介、「セラフィールドは福島第1 の未来の姿か」とのコメントで締めくくった。

27 日:青山原子力委員会専門委員「14 基新規増設無理、原発は30~ 50 年でいずれ滅びる技術。すぐとは言わないが廃止へ向けてソフトランディングで」と明快に主張。

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☆昨日も少し触れましたが、三月の報道の酷さを採り上げ検証されていないのがとても不満です。
特に原発事故がまさに危機的状況だった発災当時のニュース報道、嘘だらけだった放送が検証されていないのは問題だと思います。
あの当時、NHKも民放も東電や政府の発表する情報を御用学者たちに安全だ安心だと解説させ、無批判に流し続けたこと、その結果多くの人が避けられた被爆をしてしまったことこそ検証すべきです。
今回の原発震災で、国民は、放送局は国民の命を守ることよりも国策に従うものだということが身に沁みて分かったんではないでしょうか。
作家の五木寛之さんは、旧満州でソ連軍が侵攻してきたとき、当時のラジオ放送は「秩序は保たれている。その場に留まるように」と放送し続けていたと述べています。
それを正直に信じた人々がどうなったか・・・・
このことからも分かるように、国は決して国民の命など守ってくれないのです。
平気で棄民するということです。
そして放送局はいざというとき決して真実の放送はしないということです。
戦前、軍部に協力したNHK。戦後その反省から放送界はスタートしたはずです。
しかし、3月11日以来の放送、果たしてその反省が生かされているのでしょうか。
戦後66年経った今でも、実は何も変わっていなかったということではないでしょうか。

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コメント 4

1969kana

「もともと日本人の半分は癌になるので云々」って、いつも違和感を感じますね。
「因果関係が分かりにくい」なら、なおさら、賠償とか認められないから問題だし。
それに、「だからちょっとくらいがんが増えても」ってニュアンスを感じますよね。
ちょっとくらいと言っても、母集団が大きければそれだけがんになる人口が増えるってことなんですけどね…。
by 1969kana (2011-10-05 01:35) 

白・嶋・春・富

1969kana さん<日本人の半分は癌になるので云々や煙草の害と比べることなどほんと違和感を感じます。
癌発生率が○○%上がるとか、数字の魔術で、その程度なら原発があってもいいかなどと容認してしまう世論があると思いますね。自分だけはその増加分には入らないと・・・自分が入らないという根拠はないんですけどね。何とかこういう宣伝を打ち破らないと・・・

by 白・嶋・春・富 (2011-10-05 14:20) 

ムース

原発が安全かどうかとか、地震・津波もそうですが、仮にそこをクリアしても(しないと思いますが・・・)、放射性廃棄物の処理の問題だけで一発でアウトなんですよね。原発の致命的な弱点はそこにあると思いますし、原発のコストに今後何千年にもわたる廃棄物管理の維持費や人件費を算定していないことは確かですね。そこを突かれると、推進派もさすがに反論できないはずです。せいぜい「いずれ何とかする」という程度でしょうか。当然そのことは知っているので、報道も弱めになっているのでしょう。
by ムース (2011-10-05 23:16) 

白・嶋・春・富

ムース さん<報道は公正中立を謳っていますが、このことでは全く中立ではないですよね。原発の安全性の問題でも放射性廃棄物の問題でもそのことには答えずに、すぐに経済問題、雇用問題との比較にすりかえる。だから信用できないのです。
by 白・嶋・春・富 (2011-10-06 13:20) 

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